「十七歳の地図」

 29, 2016 22:50
「十七歳の地図」

俺の実家は熊本市から車で30分ほど南に下った地方都市で
国道3号線と57号線の分岐にほど近い。
学生時代はバイクでよく天草まで走った。57号線を西へ行くと住吉付近で右手に有明海が広がる。

満潮の有明海は灰色の穏やかな水面が続くが、干潮になると干潟に道路が現れて沖に車が止まっていたりする。
どこまでもグレーな世界だが、赤瀬・太田尾付近まで行くと風景は一変する。
青い海と沖にそびえたつ雲仙普賢岳の勇壮な姿が見え、俺の大好きなビューポイントだった。
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男子校に通っていた俺はある日同級生から声をかけられた。
「俺の知ってる女の子がバイクで2ケツしたいんだって」
それは俺に知人の女の子をタンデムで何処か連れて行ってくれという誘いだった。

もちろんタンデムはしたことあるが、女性を乗せた事は無い。
と言うかこれまで女性と話した事がほとんど無いという・・・
興味と不安が入り混じったが仲間も数人行くことになり、天草までのツーリングが決定した。

当日待ち合わせの場所に行くと、とってもチャーミングなギャルが立っていた。
とてもバイクに乗るような服装ではなく、当時で言うところのシティギャルだ^^
ちょっと可愛い過ぎる!まともに目が見れず、メットを手渡すとぎこちなくバイクに跨った。

西へ!
しばらく走ると、バイクはメットも被っているし目も合わせられないから話しやすいと言う事が解った。
エンジン音にかき消されないよう大声で、とりとめのない会話をしながら57号線を行く。
当時流行っていたウインドサーフインで賑わう太田尾海水浴場。
彼女は「わーっ」と歓声を上げた。
右手には大好きな有明海と普賢岳が浮かび、楽しさ絶好調の瞬間だった。

三角、大矢野を抜け天草上島へ。目的地は下島西海岸の高浜海水浴場だった。
普通に距離が片道130kmぐらいあって、初タンデムの彼女も辛かっただろうし、
座る位置を変えられない俺も、お尻の痛みはMAXだった(汗

困った事に休憩時や目的地に着いた時、メットを脱いで面と向かうと話す事が出来ないのだ・・・
明るい、屈託がない、自然体、感激屋、擦れていない、器量よし・・・
どんな褒め言葉を並べてもまだ足りないぐらいの彼女だ。
暗い、影がある、ぎこちない、無表情・・・正反対の俺(泣)
ちょっと世界が違い過ぎるよ~

ちゃんと話したくて帰り道夕焼けの太田尾海岸にもう一度バイクを止めた。
沈む夕陽の赤。潮騒と黄昏。
遠く台形の湯島が見え、波間を走る船が夕陽でキラキラと輝いた。

大好きな場所。大好きな・・・
何か言うべきだった。それでも何も言葉が出てこない。

そこからは何もしゃべらず彼女を送った。
最後はシールド越しにぎこちなく笑うだけが精一杯で、
踵を返し少し開け気味でアクセルを回しギヤを2ndへ。
「ダァーンン」とこんな時に限ってニュートラルに入りやがる><

それから約1ヶ月ぐらいたった頃だった。
彼女を紹介してくれた同級生が、「昨日彼女にあったよ」と話しかけてきた。
「また連れて行って欲しいって言ってたよ」
少し遅すぎたのだ。1、2週間は俺も悶々と過ごしていたが、、

「またそのうち」
そう言って彼と別れ、その日の帰りにバイクを走らせた。
1か月前に見た夕焼けの太田尾の海だった。
道は何処に続いているか解らない。それでも先に進まないといけないと思っていた。

生きて、泳げ、涙は後ろに流せ
向かい潮の彼方の海へ
vtf.jpg

そんな17歳の夏だった。

(写真は「探偵物語」からVT250Fと薬師丸ひろ子)
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COMMENT 2

Tue
2016.03.01
19:46

ちっぽ #-

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実家の前

たぶん実家の前です。
おまけにウインドサーフィンしてたの自分達だろうと思います

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Tue
2016.03.01
22:29

だんご班長 #-

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ニアミスしてますね!

ちっぽさん

当時の太田尾はすごかったですね!
駐車場が無いから国道に路駐の列が並んで、
海の家は足の踏み場が無いぐらい混雑してました。

同世代ですから何処かで絶対ニアミスしてるでしょうね^^

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